第14回 特別企画第二弾 行ってきました 公取協!
~嘘なしサイトを目指して~
今回は特別企画です。TVでおとり広告の特集が放映されるなど(※)、賃貸業界への関心が高まっています。改めて「おとり広告」について考えるべく首都圏不動産公正取引協議会の佐藤友宏次長(写真)を訪問しました。
※2016年2月26日、TV東京系WBS(ワールドビジネスサテライト)で「不動産業界の暗部」と題して賃貸広告のおとり問題が取り上げられた。
公取協佐藤次長との対話形式で構成しております。
キャスト紹介首都圏不動産公正取引協議会次長。とても温厚で、不動産業界の発展を常に考えている。ゆえに、不正広告には誰よりも厳しい。 不動産鑑定士。不動産広告におけるスペシャリスト。大学の不動産学部でも教えている。
知識も豊富で博識な生徒。真面目で疑問はその場で解決しないと気が済まないこだわり屋さん。
■運が悪いから指摘される?
- この連載企画にご登場いただくのは2回目になりますね。今回もどうぞよろしくお願いいたします。
- 私もこういった場でお話できることはよい機会だと考えていますので、お答えできることは何でもお答えしますよ!
- では早速ですが、2月に放映されたWBSはごらんになりましたよね?「おとり物件チェッカー」のロジックがどうなっているのか、ポータルサイトに掲載された物件が空室ならば自社で案内するというフリーライドが許されるのかなど、確認したいこともたくさんありましたけど…。
- 番組は、当然、見ています。SUUMOさんのサイトが使われていましたよね。
- 成約済み物件が掲載されることのないようSUUMOでも日々、努力しているのですが…。
- そうですよね。SUUMOさんはじめ不動産情報サイトのご協力もあって、存在しない架空物件など最も悪質なおとり広告は減ってきているように思います。
- 番組で取り上げられたような、故意に成約済み物件を載せ続けている業者はごく一部ということですよね。
- そうです。それはそうと、日頃、調査をしていると気になることがありまして。
- と言いますと?
- 公取協から調査が入ると「運が悪かった」という業者さんがいるんですよ。
- 「たまたま成約物件の削除を忘れただけなのに…」ということでしょうか。
- どうなんでしょう。いずれにせよ、「運が悪かった」という考え方はいかがなものかと思いますよ。成約済物件を載せてさえいなければそもそも指摘が入らないわけですから。
- 公取協さんの調査は、他の業者さんからの指摘が発端で指導に入るんでしょうか。
- そういうケースが多いです。しかし私達は、指摘が入った際にはその物件だけでなく、他の物件についても調べます。そうすると、指摘をうけた物件以外も成約済だったり、不当表示だったり、というものがでてきます。「たまたま、運悪く指摘が入った」というよりも、「もともと広告ルールに違反している物件が掲載されている業者が調査の対象となっている」のだと思います。
■どこまでなら「お目こぼし」?
- 規約を遵守するということに、どこか甘さがあるということでしょうか。
- そうかもしれません。そう言えば、ある会社の広告担当者から『どこまでなら大丈夫なんですか?』と聞かれたことがあります。公取協から目をつけられないのはどこまでなのか、と。
- 措置をうけるガイドラインを教えて欲しいというわけですか(笑)。
- ガイドラインも何も、表示規約を守っていただければ何も問題ないわけです。『表示規約違反がある以上、どこまでも目をつけますよ』と、お答えしましたが(笑)。
- 業務も忙しいし、少しくらいはお目こぼしを、という気持ちもあるのでしょうか。
- 成約済物件を掲載する「おとり広告」を積極的にやろうしているわけではないのでしょうが、結果として成約済物件が「放置」されている業者さんもいるように思います。
- どうしてそんなことになっちゃうんでしょうか…。
■マンパワーにあった掲載を
- 一つの要因としては、掲載物件数とマンパワーのバランスがとれていないことが挙げられるかもしれませんね。営業担当が2人しかいないのに500件も1,000件も物件を掲載しているとなると、更新が追い付かないこともあるでしょう。とはいえ、「物件数が多く人手も足りないから、情報が間違っていても仕方がない」というわけにはいきません。
- それは業者さん側の論理であって、一般消費者には無関係な話ですし、きちんと情報管理している他の業者さんにとっても迷惑な話ですからね。
- 人数に対して適正な広告量の目安といったものはあるのでしょうか?
- いえ、公取協としては、「マンパワーにあった物件を掲載してください」、としか言えませんね。
- 担当の方の能力や経験によっても対応できる件数が違ってくるでしょうしね。
- 一つ言えるのは、自分の会社で扱っている物件には責任を持つ、という意識が大切だということです。
- と言いますと?
- 調査をかけると、社長さんが『なんでこんな物件がでているんだ!?』と驚かれることも少なくないんですよ。自社のウエブサイトやポータルサイトにどのような物件が出ているのか把握していないようなんですね。
- 現場の方に任せきりということでしょうか。
- 特に賃貸の業者さんにその傾向が多いように思います。一般に売買仲介の業者さんは地域密着で営業されていることが多く、物件の状況も把握している。ところが賃貸でターミナル駅に店舗を構えている業者さんになると、人気のある沿線の物件は全て出している、というところが多いです。でもそれに見合うだけの人員を配置しているかというと、どうもそうではないように思います。
- 物件を広告する以上は、「掲載物件を把握することも含め、管理もしっかりお願いします」、ということですね。
■わかったらすぐに落とす
- 成約済物件をなくすためにもう一つお願いしたいことがあるんです。
- なんでしょう?
- 成約済であることがわかったらすぐに落とすということです。
- 当然のことのように思いますが、実際にはそれができてないということですか?
- そうなんです。SUUMOさんでも物件更新の期限というのを設けていますよね。
- 1週間に1回以上の更新をお願いしています。
- 多くの情報サイトは1週間に1回、サイトによっては2週間に1回。それぞれ情報更新を行うルールになっていると思いますが、業者さんの中には「更新期限が来るまで成約済物件を載せていてもいい」と勘違いされている方もいるんです。
- たしかに!SUUMOでもクレームの6、7割は成約済なんですが、ご連絡しても『昨日更新したばかりなので、次の更新タイミングに落とせばよいですよね』という業者さんもいるんです。もちろん、抹消していただける方がほとんどですが、時々抹消をためらう業者さんもいらっしゃいますね。
- 2週間とか1週間と言うのは、その間、“取引状況に何も変化がなかった物件をまとめてクリーニングするための期間”です。でも「更新期限まで4日あるから、成約済物件をあと4日間は落とさなくてもいい」ということではないんですよ。成約した物件はとにかく削除してください。業界団体の研修会でもその点を強調しています。
- 成約済であることがわかったらすぐに削除する。それが一番の防止策だということですね。
■管理会社も正しい情報提供を
- ちょっといいでしょうか?
- なんでしょう?
- SUUMOに寄せられているクレームを見ていると、中には管理会社さんが原因と思えるものもあるんです。
- 「管理会社さんの情報が間違っているからクレームになる」、といったケースですか?
- そうなんです。クレームが入ると管理会社さんに申し込みが入っていないかの事実確認を行うのですが、「確かに申込みは入っていますが、まだ契約前だから、広告しても大丈夫です」と言う答えが返ってくることも少なくないんです。
- うーん、それは困るなぁ。
- 申込み段階で広告を削除するというルールは客付業者など自社で広告する業者さんには浸透してきたと思うんですが、ご自分では募集広告を出さない管理会社の担当者さんの中にはそのルールをご存じない方もいるように思うんですよね。
- 客付け業者さんからの成約確認の問合せに対して、申込み済み物件にも関わらず「広告してもいい」、と回答してしまうということですね。
- そうです。そしてその広告を見た他の業者さんが「申込み済みの物件が掲載されている」と指摘をしてくるんです。もう一つは管理会社さんが、自社とお取引のない仲介業者さん対し、空室物件なのに「この物件は決まった」と答えてしまうというケースもあるようなんです。
- 本当はまだ決まっていないのに?
- そうなんです。こちらから確認すると、「まだ空いています」というお答えなんです。指摘した業者さんにそのようにお伝えすると「いや、うちが確認した時は成約済と言われた。」と堂々巡りで・・・。
- それは、無断掲載ではないの?
- はい。管理会社さんは会社間流通物件検索に掲載していますから、“どこの業者さんが客付けしてもいい”というのが前提なんですよね。途中から方針が変わったのか、ご担当の方によって意見が違うのか…。
- いずれにせよ、客付業者さんとしては困るよね。
- そうなんですよね。
- 成約済か否かも含めて、管理会社さんにも正しい情報を提供していただく必要がありますよね。公取協としては、広告主ではない管理会社、元付業者さんを直接指導するのは難しいんですよね?
- 管理会社さんらにも正確な情報を提供するよう、私達も研修会などでお願いしています。例えば、「諸費用は全部図面に書いてください」とお話しています。
- 諸費用ですか?
- 鍵交換代や保証料などの初期費用です。管理会社の方にしても、「客付け業者さんからいちいち聞かれるのは面倒でしょう、図面に情報をたくさん載せておけばその手間も省けますよ」というお話をしています。少しでも業務効率があがれば、その分違反も減っていくと思いますからね。
■信頼される業界にするために
- 賃貸業界一番の課題はおとり広告です。おとり広告をなくすために何ができるのか。SUUMOさんが行っている審査機能や名寄せもその一つでしょう。管理業者さんも正確な情報を提供する。客付業者さんもマンパワーにあった物件掲載をする。成約済物件は迅速に削除する。それぞれが地道な努力をしていくことが大切な事なのだと思います。
- 「不動産業界の暗部」などと言われないために、客付業者さんも管理業者さんも、もちろん我々媒体も、もっと努力していく余地があるということですね。
- 本日は、どうもありがとうございました。
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