そうだったのか!不動産広告。SUUMO掲載実践編

講師と2名の生徒による会話形式で構成しております。

<キャスト紹介>
k: 不動産鑑定士。不動産広告におけるスペシャリストで生徒の質問にも優しく答える
b: 博識な生徒。真面目で疑問はその場で解決しないと気が済まないタイプ
c: 思い込みが激しいが故にミスを犯しやすい生徒。無邪気に素朴な疑問を投げかける

第9回 意外と難しい?画像使用ルールの再確認


  • c:今回は画像使用ルールの解説です。
  • b:ネット広告では、「画像の良し悪し」が反響に大きな影響を与えると言われていますので、皆さんもご関心の高いテーマだと思います。
  • c:実際にあったお問い合わせをご紹介しながら解説していきます。それでは先生、お願いします。

■実際に取引する物件の写真を使用する

Q1:募集物件の写真が用意できません。同じ施工会社による他の物件の写真があるのですが、それを使ってもいいでしょうか?ユーザーの誤認を招かないように「実際のものとは多少異なります」という注釈を入れようと思います。
  • b:写真や絵の使用は、「実際に取引するものの写真を使用する」というのが基本でしたよね。
  • k:そうです。表示規約も「宅地又は建物の写真は、取引するものの写真を用いて表示すること」と規定しています(施行規則第10条22号)。
  • c:まぁ、当たり前ですよね。広告にはハイグレードな物件の写真を使っていて、実際に借りられるのはグレードが低い物件だった、というのでは困りますから。
  • b:未完成物件であれば完成予想図を使うのでしょうが、賃貸の場合、完成予想図を作成しないケースも多いですよね。
  • k:その場合は、「同仕様写真」と呼ばれる他の物件の写真を使用することも認められています。ただし、使用する写真と取引する物件の規模、形状、品質等が同一でなければなりません。

■「実際のものとは異なります」というコメントを入れればいいのか

  • c:全く同じじゃなければダメってことですか。
  • k:そうです。
  • c:少しくらい違っていてもユーザーは困らないと思うんですけど。
  • k:そうかもしれません。しかし、少しくらい違っても・・・の「少し」というのは人によって異なります。だから「少しくらいなら違ってもいいです」というルールにはできません。
  • b:ご質問にあるように「実際のものとは多少異なります」という注釈をつけてもダメなんでしょうか?
  • k:ダメです。首都圏不動産公正取引協議会も『実際とは異なる建物のパースは、注釈を付記したとしても掲載することはできません。』としています(「公取協通信」第246号 平成26年9月号 Q3参照)。
  • c:注釈をつければいいってわけじゃないんですね。
  • k:いくら注釈をつけても、実際に取引する物件よりも優良であると誤認されるような写真を用いれば不当表示になる、ということです。

■優良誤認を招く写真の加工は認められない

Q2:写真に隣家の表札が映っています。加工して消してしまってもいいのでしょうか?
  • c:写真を加工するのは、ダメですよね。
  • k:実際よりも優良に見せることを目的とした加工は当然認められません。
  • b:外観写真で電線を消しちゃう、とか。
  • c:それはずるい。
  • k:しかし、表札や車のナンバープレートなどを消すのであれば加工も認められています。
  • 車のナンバープレートなどを消す加工
  • c:これは消さないとトラブルになりそう。
  • b:個人情報保護のために加工が必要ってことですね。

■SUUMO独自のルールもある

  • c:画像ルールについては、SUUMO独自の規定もありますよね。写真内に文字を入れるのはダメとか。
  • 写真内に文字を入れるのは禁止
  • b:組写真もダメだって聞きました。
  • k:写真内に文字を入れるのも、複数の写真を組み合わせて一枚の写真として扱うのもSUUMOの規定では原則として認めていません。
  • 複数の写真を組み合わせて一枚の写真として扱うのも原則として認めていません。
  • c:わかりにくいだけですよね。
  • k:もっとも「撮影年月日を入れる」「壁や床の素材を選択できることを示すために複数の写真を組み合わせる」といった合理的な理由があれば認められます。
  • b:具体的にはどのようなものがあるんですか?
  • k:たとえば下の写真のように、「壁紙が選択できることをキャプションで説明する」といった場合であれば、組み合わせ写真も認められます。
  • 壁紙が選択できることをキャプションで説明

■カタログの写真を使用できるのか

  • c:①実際に取引するものの写真を使用する②不必要な加工はしない、この2点を抑えておけば、画像使用については大丈夫そうですね!
  • k:さぁ、どうでしょう。たとえば、次のようなお問い合わせにはどう回答します?
Q3:写真がないのでハウスメーカーのカタログにある写真を掲載しても良いでしょうか。管理会社から使って欲しいと言われているのですが…。
  • c:カタログの写真ですか。
  • b:ハウスメーカーさんの規格(企画)住宅と呼ばれるものですね。
  • k:そうです。同じシリーズの規格(企画)住宅なのだから、賃貸募集広告にカタログの写真を使ってもいいか、というご質問です。
  • c:実際にそのシリーズの住宅が建っているんですよね?だったらいいと思うんですけど。
  • b:でも中古だったら経年劣化があるから、カタログ通りの状態じゃないかも・・・。
  • c:そーか。じゃあ、新築ならいいのかな・・・。
  • k:新築でも、敷地の形状・面積などによりカタログと異なった建物になっていることも考えられます。
  • c:うーん、カタログ写真は使えないってこと?
  • b:玄関など実際に賃貸される住戸と写真が一致している部分についてなら使用してもいいと思うんですけど。
  • k:その通りです。賃貸される住戸と同じなのであれば問題はありません。カタログ写真ならばいいとか駄目とかではなく、使われている写真が「実際に取引するものと同一か否か」という観点から判断すべき問題ですね。

■イラストは使用できるのか

Q4: 画像に室内の手書きイラストを掲載する事は可能でしょうか。
  • 室内の手書きイラスト
  • c:うわー。うまいですねー。
  • k:確かに上手なイラストです。しかしながら、目下の論点はイラストの巧拙ではありません。
  • b:写真じゃなくてイラスト!? 広告に使ってもいいんですか?
  • k:表示規約施行規則でも「写真・絵図」という項目で、「見取図、完成図又は完成予想図」の使用を認めています。手書きのイラストであっても一般消費者の誤認を招かないのであれば使用可能です。
  • b:イラストでも「実際に取引する物件について誤解なく伝えられるかどうか」がポイントになるわけですね。

■事実であっても問題になることがある

  • c:つまり「事実をきちんと伝えなさい」ってことですね。
  • k:そうです。でも「事実であればいい」とは言い切れないのが画像使用の難しいところなんです。
  • b:??? 事実でもダメな場合があるんですか?
  • k:知的財産権侵害や個人情報保護の観点からも使用の是非を考える必要があります。有名なキャラクターなどは特に注意が必要です。
  • c:なかなか難しいですね。
  • k:写真やイラストは正しく使えば広告効果を高める反面、使い方によっては不当表示になったり、商標権や著作権を侵害するなどのトラブルにつながることも考えられます。ルールを守った正しい使用をお願いいたします。

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