そうだったのか!不動産広告。SUUMO掲載実践編

設問とそれに対する解答を講師と2名の生徒による会話形式で構成しております。

<キャスト紹介>
k: 不動産鑑定士。不動産広告におけるスペシャリストで生徒の質問にも優しく答える
b: 博識な生徒。真面目で疑問はその場で解決しないと気が済まないタイプ
c: 思い込みが激しいが故にミスを犯しやすい生徒。無邪気に素朴な疑問を投げかける

第4回 値引き表示は許されるのか?


【問題】
物件募集広告で次の表示は認められるか
①8月31日までご契約の方は、賃料8万円を6万円に値引きします
②学生の方は、賃料8万円を6万円に値引きします

◆事実であっても認められない表示もある

  • c:値引きすることは事実なんですよね。それなのに認められないなんてことがあるんですか?
  • k:それを考えるのが今回の問題です。
  • b:キャンペーン賃料の話※…とは違いますよね?
  • k:キャンペーン賃料は、契約期間のうち一部の期間の賃料を値下げするもので、"2年間の賃貸借契約のうち3か月間だけ6万円に値下げする"、というのがその例です。今回の事例は契約期間の2年間ずっと6万円になるということなので異なりますね。
  • c:えー、お得な情報じゃないですか!カスタマーの皆さんに伝えたいです。
  • k:お得と言い切っていいかはわかりませんが、8万円より安く借りられるのは事実ですね。
  • b:では、この表示はOKということでしょうか?
  • k:ところが違うんです。①の表示は認められません。

◆過去の賃料を比較対象価格とした二重価格表示は認められない

  • c:…わかった。賃料の二重価格表示は認められないからだ!
  • b:二重価格?あぁ、〔4,500万円→4,000万円〕といった表示ですね。
  • k:確かに、過去の賃料を比較対象とする二重価格表示は賃貸では認められていません。
  • c:①の表示は〔8万円→6万円〕と同じ意味だからダメだということですよね。
  • k:そうなりますね。

◆割引表示なら認められる

  • b:ということは、②の表示も認められないのでしょうか?
  • k:いいえ、②は認められるんです。
  • c:え!?8万円の物件を学生なら6万円で借りられるっていうことですよね。それって〔8万円→6万円〕という二重価格表示にはならないんですか?
  • k:なりません。②は、"一定の条件に適合する取引相手方に対し値引きする"というものです。規約上、「割引表示」と呼ばれるもので、この表示は認められています。
  • c:一定の条件?
  • k:今回の問題で言えば「学生」というのが一定の条件です。この条件に該当する人のみが賃料を割り引かれると考えるのです。他には「2物件まとめて借りると賃料が割り引かれる」「家賃を1年分前払いすると割り引かれる」といったものがよく例として挙げられます。
  • b:「新婚カップルは賃料が安くなる」という表示をみたことがあります。
  • k:「新婚カップル」とは結婚後何か月までを指すのか、婚約中でもいいのか、など、「新婚」の定義をはっきりさせる必要がありますが、そういう表示も可能ですね。

◆全員が該当するものは割引表示にはならない

  • c:あのー、「一定の条件」というのがよくわからないんですけど…。
  • k:と言いますと?
  • c:「学生」や「新婚」は一定の条件ですよね。
  • k:はい。
  • c:それなら「8月31日までに契約する」というのも一定の条件とは考えられないんですか?
  • b:ほんとうだ。
  • k:ところがダメなんです。
  • c:??
  • k:一定の条件というのは、「Aさんは満たすけれど、Bさんは満たさない」と言うものでなければなりません。①は、期間内に契約した人「全員」が6万円で借りられることになりますよね。それでは「一定の条件とは言えない」、というのが公取協の判断です。
  • b:①は、8月中に契約した人全員が割引対象となるからダメなのですね。
  • k:そうです。ですから②の表示であっても、もともと学生のみを対象とした物件であれば、「学生の方は賃料6万円」と表示することはできません。
  • イラスト

◆SUUMOで表示するには

  • c:ということは、①のように一定期限までに契約した人の賃料は安くなるという物件の広告はできないんですか?カスタマーも知りたがる情報なのに…。
  • k:そんなことはありませんよ。「通常賃料の8万円」を削除して、単に「賃料6万円」と表示すればいいのです。
  • b:でもそれでは、9月以降に契約しても6万円で借りられると誤解されませんか?
  • c:あっ、確かに。
  • k:【表示例①】のように、備考欄に「8月31日までにご契約いただいた方の賃料です」といった表示をすればいいでしょう。

【表示例①】
表示例①

  • b:なるほど、このように表示すれば誤解はないですね。
  • c:②の学生対象の割引物件は、【表示例②】のように賃料欄に「8万円」と入力し、備考欄に「学生の方は6万円」と入れるんですよね?

【表示例②】
表示例②

  • k:その表示でも結構ですし、賃料欄に「6万円」と入力し、備考欄に「学生限定」と表示して頂いても結構です。
  • c:え?さっき「学生限定」はダメだって…。
  • b:それは、もともと学生しか借りられない物件を、「学生の方は賃料8万円を6万円に値引きします」と表示するのは、賃料8万円が嘘だからダメだってことですよね。
  • k:その通りです。「一般の方は賃料8万円。でも学生であれば6万円で借りられる」という物件を「学生限定 賃料6万円」とのみ表示しても問題ありません。ただし、どちらの表示にするにしても礼金、敷金についても誤解のないように表示する必要があります。
  • b:そうか。「学生の方は賃料8万円を6万円に値引きします」と表示してあって、「敷金1月」では、学生の方の敷金が6万円なのか8万円なのかよくわからないですね。
  • k:そうです。割引表示をした場合には礼金、敷金など一時金も割り引かれるのかどうか明確にしないとトラブルにつながります。
  • c:うーーん、なるほど!広告表示って本当にいろいろ大変なんですね。今回も勉強になりました。

※参考記事/キャンペーン賃料の表示にご注意を

【解答&今回のまとめ】

解答:②の表示は認められるが、①は認められない。
<今回のPoint>
● 割引表示として認められるためには「一定の条件に該当する人」のみを割引の対象としていることが必要。全員を対象としている場合には、不当な二重価格表示となるおそれがある。
● 割引表示する場合、礼金・敷金など一時金についても誤解を招かないよう表示する。

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