そうだったのか!不動産広告。SUUMO掲載実践編

設問とそれに対する解答を講師と2名の生徒による会話形式で構成しております。

<キャスト紹介>
k: 不動産鑑定士。不動産広告におけるスペシャリストで生徒の質問にも優しく答える
b: 博識な生徒。真面目で疑問はその場で解決しないと気が済まないタイプ
c: 思い込みが激しいが故にミスを犯しやすい生徒。無邪気に素朴な疑問を投げかける

第3回 表示責任を問われるのは?


【問題】
A社は、自社管理物件である25m2の1Rを、ロフト部分(7m2)も含めて「面積32m2」と表示した資料を作成して、客付業者に配付した。これを見た客付業者のB社は、面積を32m2としてSUUMOに掲載してしまった。この場合、不当表示の責任を問われるのは誰か。
問題イメージ
①誤った資料を作成したA社。
②広告表示したB社。
③B社はA社の資料に基づいて広告を作成しただけであり悪意はない。またA社は広告表示したわけではない。したがって、A社、B社とも責任を問われることはない。
④広告表示したB社と資料を作成したA社の連帯責任となり、両社とも不当表示責任を問われる。

◆元付業者の資料が間違っていることもある

  • b:元付業者さんや管理会社さんの資料が間違っていたために、誤った広告表示をしてしまった、という話を聞いたことがあります。
  • c:築年や駅からの徒歩分数の間違いとかですよね。
  • k:残念ながら、そういう事例もあるようですね。
  • b:元付業者さんの資料には礼金0となっていたのでそのまま表示したところ、実は礼金0のキャンペーン期間が終わっていた、という話もありました。
  • k:賃料や面積などで表示に誤りがあると、大きなトラブルになってしまうことも考えられます。
  • c:で、今回の事例はロフトの面積を床面積に含めてしまったと…。
    ロフトは建築基準法上、床面積には入らないので、床面積に含めてはいけないんですよね?
  • b:はい、実践編の第1回で勉強しましたね。

◆広告主責任

  • c:誰が責任を問われるのか?というのが今回の問題ですね。
  • b:B社は、元付業者であるA社の資料をもとに広告を作成しただけなのだから、B社の責任だというのはかわいそうな気もします。
  • c:そうだよね。元付業者のA社が間違えたのが原因なんですからね。
  • k:確かに、そういう見方もあるかもしれませんが、公取協は『広告表示をした業者に責任がある』としています。
  • b:B社が不当表示の責任を問われるということですか。
  • k:そうです。
  • c:え?ではA社は?
  • k:広告をしていない以上、表示上の責任を問われることはありません。
  • c:えー、もとはといえばA社が間違えた資料を作ったことが原因なのに?
  • k:そうです。

◆広告表示は無過失責任

  • b:ちょっといいですか?
  • k:はい、なんでしょう。
  • b:たとえば、実際には徒歩15分の物件が元付業者さんの資料では徒歩5分と表示されていた。こういう場合なら客付業者さんも5分というのは表示が誤りだとわかると思います。
  • k:物件の所在地が分かっているので、自分で調べることができますからね。
  • b:でも今回のように面積が間違っていた場合には、客付業者さんとしてはわかりようがないんじゃないでしょうか?それなのに、B社の責任というのは厳しいような…。
  • k:確かに客付業者にとっては厳しいと思います。でも、優良誤認を与える広告表示をしたのは事実です。一般消費者にとっても、正確な表示をしている他の事業者にとっても迷惑な話です。元付業者の資料が間違っていたのだから誤った表示をしても不問、というわけにはいかないでしょう。
  • b:B社が悪くなくても、B社の責任になるということでしょうか。
  • k:広告表示は無過失責任です。つまり不当表示したB社に故意、過失がないとしても、不当表示した以上責任がある、というのが基本的な考え方です。
  • c:うーーん、厳しいなぁ。

◆トラブルは防止できる

  • k:ところで、先ほどの面積の話ですが、本当に「わかりようがない」のでしょうか?
  • b:といいますと?
  • k:間取り図をみると洋室10畳にキッチン、バス、トイレがありますよね。とすれば「この間取りで32m2は少し大きいかな?」といった推測が働くんじゃないかと思うんです。
  • c:うーん、そうかな…。
  • k:確かに、単純な間違いで32m2を35m2と表示されていたというのであれば入稿時に間違いを見つけるのは難しいと思います。でも今回の事例では、25m2が32m2と表示されています。3割近くも大きい表示で、しかもロフト付きの物件です。「ひょっとしてロフトが含まれているのでは?」と推測することも可能だと思うのです。

◆ロフト付き物件は面積が大きくないか注意する

  • c:面積や賃料などを元付業者さんの資料から単純に書き写して入稿していてはダメだ、ということですね。
  • k:多くの物件をSUUMOにご掲載頂いている業者さんもいらっしゃいますので、ある程度は機械的に入力していくというのもやむを得ないと思います。しかしロフト付きの物件など特殊なものだけでも少し慎重に対応することで、トラブルはぐっと減らせると思います。
  • b:ロフト付きの物件には要注意!ということですね。
  • k:間取りの割には面積が大きいな、と思える場合には元付業者確認した方がいいでしょうね。

◆賃料が安すぎる場合にも確認する

  • k:キャンペーン賃料の表示もれも同様です。
  • c:キャンペーン賃料…。「2年契約で賃料10万円なんだけれど、当初3か月間は賃料5万円でいいよ」といったものですね。
  • b:元付業者さんの資料では「当初3か月間のみ」というのがわかりにくかったため、5万円とだけ表示してトラブルになったケースを聞いたことがあります。
  • k:その場合でも、賃料5万円というのは相場に比べて相当安いはずです。相場からかけ離れた賃料ならば、「一定期間だけに適用されるキャンペーン賃料ではないか」とか「定期借家ではないか」といった推測が働くのではないかと思います。
  • b:賃料が相場より極端に安い場合には、念のため元付業者さんに確認することでトラブルを防げるというわけですね。
  • c:客付業者さんも大変ですね。
  • k:そうです。でも、誤った表示をしてエンドユーザーとトラブルになるのは、広告し、案内をする客付業者です。また表示規約上も不当表示として責任を問われてしまいます。
  • b:『広告主責任』ですからね。
  • k:とすれば、時間をかけででも、正確な情報提供に努める方が、結局は会社に利益をもたらすことになるのだと思います。

【解答&今回のまとめ】

解答は②。広告したB社が不当表示をした責任を問われる。
<今回のPoint>
● 広告主責任は無過失責任。元付業者の資料が間違っていたことが原因であっても、責任は基本的には広告した業者(客付業者)が負う。
● ロフト付きの物件、賃料が極端に安い物件などは、元付業者によく確認してから入稿する。

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