設問とそれに対する解答を講師と2名の生徒による会話形式で構成しております。
<キャスト紹介>
k: 不動産鑑定士。不動産広告におけるスペシャリストで生徒の質問にも優しく答える
b: 博識な生徒。真面目で疑問はその場で解決しないと気が済まないタイプ
c: 思い込みが激しいが故にミスを犯しやすい生徒。無邪気に素朴な疑問を投げかける
第2回 駐車場のある物件
【問題】 物件募集広告で以下の表示があった。これらの広告表示に違いはあるか? ①賃料9万円。駐車場1万円。 ②賃料10万円(駐車場無料) ③賃料10万円(駐車場込み) |
◆必ず駐車場を借りなければならないのか?
- c:3パターンとも、10万円で部屋も駐車場も借りられるってことですよね。意味は同じなんじゃないですか?
- b:①では賃料9万円で検索されるから、②や③より安く見えるような…。あれ?ということは①の表示はダメなんですか?
- k:そんなことはありません。①の表示でもいいですよ。ただし②、③に比べて少し曖昧なところがありますね。
- c:というと?
- k:①では、住宅の賃貸借契約(賃料9万円)と駐車場の賃貸借契約(賃料1万円)という2つの契約があるようにも見えます。
- c:???
- b:それが何か問題になるんですか?
- k:①の場合、住宅だけ借りて駐車場は借りない、ということも認められると思いますか?
- c:うーーん、どうなんだろう?
- k:①の表示だと車を持たない人が「9万円で住宅だけ貸りることができる」と思うかもしれません。
◆駐車場も一緒に借りることが条件ならばその旨、明示する
- b:でも戸建住宅で住居の横が駐車スペースとなっている場合などは、住宅だけ貸してくれ、と言われても困りますよね。
- k:そうですね。でも、もしそうであれば、住宅と駐車場をセットで借りることが条件となっていることをきちんと伝える必要があります。
- c:②や③の表示にするということですか?
- k:そうです。②や③の表示であれば、住宅だけ借りることはできないということが伝わります。①の表示であれば、備考欄などに「駐車場も併せて借りることが条件です」といった表示をしないと「住宅だけ借りることもできる」と受け取られてしまう可能性があります。
◆礼金、敷金、仲介手数料についても誤解を招かないように
- b:なるほど!①の表示では、9万円で住宅だけを借りることができるのか、10万円払って駐車場とセットで借りなければならないのかが曖昧だということですね。では、②と③は同じ意味だと考えてもいいのですか?
- k:どう思います?
- c:あえて問題にしているところをみると、何か違いがあるような…。
- k:②は住宅の賃料が10万円、駐車場はタダ、ということです。
- c:はい。
- k:③は住宅の賃料がいくらで駐車場がいくらか、その内訳は不明だがとにかく合わせて10万円だということです。
- b:・・・違いがあるんですか?
- k:ないでしょうね。
- c:ないんですか!?なんですか、それ・・・。
- k:今回の設問のように、駐車場の場合は、違いはないのですが、これが「賃料10万円(管理費・共益費無料)」と「賃料10万円(管理費・共益費込)」とでは話が違ってきます。
- b:どちらも10万円で借りられる、ってことですよね。
- k:そうです。でも仲介手数料はどうなるのでしょう?管理費・共益費の分も含めて請求するのですか?それは業法上問題ないのでしょうか?礼金1月、敷金1月と表示されていた場合、管理費・共益費も含めて計算するのでしょうか?それとも賃料の1月分のみなのでしょうか?
- b:・・・広告を出した業者さんに聞いてみないとわからないですね。
- k:その通りです。③の方は、賃料がいくらなのか明示されていないため、いろいろと誤解を招くおそれがあると思います。
- c:管理費や共益費を含めて仲介手数料を受け取ってはいけないのですか?
- k:宅建業の報酬を規定した大臣告示では、「宅地又は建物の借賃」という表現をしています。
宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)の合計額は、当該宅地又は建物の借賃(当該貸借に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該媒介が使用貸借に係るものである場合においては、当該宅地又は建物の通常の借賃をいう。以下同じ。)の一月分の1.08倍に相当する金額以内とする。この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の0.54倍に相当する金額以内とする。
◆インターネット使用料込
- c:なんだか難しいですね。1.08倍とか0.54倍ってなんですか?
- k:宅建業者が消費税の課税事業者であれば、仲介手数料に消費税相当分を加算できるということです。仲介手数料が賃料の1月分なら8%加算して1.08月分まで受け取ることができます。0.5月分なら0.54月になります。
- b:消費税は8%になりましたからね。
- k:では、本題に戻りましょう。 「宅地又は建物の借賃」とありますから、管理費・共益費は含まれないと読めます。この観点から考えると、 「賃料10万円(インターネット使用料込)」といった表示も問題になる可能性があります。
- c:インターネット使用料も含めて仲介手数料を請求するのは問題になるということですね。
- k:そうです。さらに「賃料10万円(インターネット使用料込)」という表示では、『私はネットを使わないのでその分、賃料をさげてくれ』という人も出てくるかもしれません。
- b:駐車場の場合、駐車場の料金を含めて仲介手数料を受け取っても問題ないのですか?
- k:駐車場の賃貸借契約の仲介をしたということなら問題ありません。
- c:駐車場の仲介も宅建業にあたるから問題ないのかぁ。
- b:管理費・共益費やインターネット使用料で問題になるということですね。
- k:法律上の扱いもさることながら、エンドユーザーにわかりやすく表示することが大切なんだと思います。駐車場を借りることは任意なのか、それとも駐車場もセットでなければ借りられないのか。礼金、敷金はいくらなのか。あいまいな表示では無用なトラブルを招くことも考えられます。
◆消費税込みの駐車料金を入力する
- k:最後にSUUMOでの入稿方法について確認しておきましょう。
- c:実践編ですからね。
- k:下の図が入稿画面です。まず駐車場欄の「あり」にチェックします。
- b:駐車場に空きがあることが大前提ですね。
- k:空きもないのに「駐車場あり」と表示しては、不当表示になります。
- c:公取協さんから怒られてしまいますね。
- k:「あり」にチェックした後は、「付無料/有(敷地内)/近隣駐車場」のうちから該当するものを選択します。料金は万円単位ですが小数点4ケタまで入力可能です。つまり1円単位まで入力できるということです。ちなみに消費税込みの料金を入力します。
- c:外税ではダメなんですか?
- k:SUUMOでは消費税を含めた駐車場料金の記載をお願いしています。
◆近隣駐車場は距離も入力する
- b:近隣駐車場の場合には駐車場までの距離も入力するのですね。
- k:そうです。m単位で入力します。
- c:「近隣駐車場は物件から何m以内」といったルールはないのですか?
- k:特にありません。地域によって駐車場事情が異なるでしょうから。
- b:【駐車場備考指定】というボタンもありますね。
- k:ここから「駐2台可」「地下駐」「シャッター付き車庫」といった項目を選ぶことができます。
- c:駐車場一つとっても注意すべきことは沢山あるということですね。
【解答&今回のまとめ】
解答:②と③の違いはないが、①は駐車場が必ず借りなければいけないものなのかどうかがあいまい。 <今回のPoint> ● 契約条件(駐車場を借りなくてもいいのか等)を明確にするとともに、礼・敷、仲介手数料などについてもユーザーの誤解をまねかないように表示することが大切。 |
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