そうだったのか!不動産広告。

第9回 繁忙期をトラブル0で乗り切るために!

忙しい時に限って無用なトラブルに巻き込まれる。そんなご経験はありませんか?オンシーズンを控えた今回は SUUMOに寄せられたクレームを元に、"トラブルを未然に防ぐ"ためのポイントを解説したいと思います。

どのようなクレームが多いのか

SUUMOのお問い合わせ窓口には、ユーザーや同業者(宅建業者)から日々多くのメールや電話が入ります。問い合わせ・相談だけでなく、残念ながら皆さま方、宅建業者さんに対するクレームも寄せられます。以下がその主なものです。

(1)成約済物件の掲載
(2)広告内容の間違い(金銭以外)
(3)元付無断掲載
(4)広告内容の間違い(金銭)
(5)広告表示がわかりにくい
(6)資料請求したが、なんの連絡もない
(7)素材(写真や間取り図)を無断で使用された

このうち「成約済物件の掲載」が半分以上を占めています。「いい物件が見つかった」と思って反響を入れたユーザーの失望感は大きいのでしょう。また、同業者からも「成約済物件を掲載し続けて反響を取っている」と苦情が入ります。

物件クリーニングを徹底する

成約済物件の掲載を防ぐには、物件クリーニングの徹底しかありません。「マンション・アパートであれば部屋番号を指定して確認する」「申し込みが入った時点で広告掲載はできなくなる(←公取協のルールです)」といったことがポイントです。繁忙期は動きが早いので、通常期よりもこまめな確認が必要となります。やることが多いのでついつい後回し…ということも起こりがちですが、万一クレームになると、もっと多くの時間を取られることになってしまいます。

また、仮に成約済物件を掲載してしまったとしても、ユーザーの来店前にメールや電話で事情を説明すれば、大きなトラブルにはならないと思います。ところが、中にはこんなケースもありました。

物件見学のために新幹線で上京した。訪社前にも確認の電話を入れ、「まだある」とのことだった。
ところがいざお店に行くと「午前中に申し込みが入ってしまいました」と言われた…

これでは、ユーザーが怒るのも無理はありません。業界全体の不信感にもつながってしまうでしょう。オンシーズンは、遠方から物件を探しにくる方も少なくないはずです。「交通費を支払って欲しい」といった要求にもなりかねません。

成約済物件掲載の原因とその対策については、この連載の第4回でもご説明しました。
第4回 言ったつもり、やったつもりがおとり広告に…
ご参考にして頂ければと思います。

広告表示していい賃料なのか

広告内容の間違い(金額)については、「広告に表示していい賃料」なのか、オーナーの意思をしっかりと確認することが大切です。こんなケースがありました。

同一物件を複数の会社がSUUMOに掲載。そのうち1社だけが賃料を4.8万円と掲載し、他社は5万円で掲載していたためクレームとなる。事実確認したところ、当初は「うちは4.8万円の賃料でいいとオーナーから言われている」との話だった。しかし改めて確認してもらうと、オーナーは「早く成約できるなら、2千円までの値下げに応じてもいい」と言っただけであり、広告掲載とは別の話だった。

オーナーの意思としては、募集賃料はあくまで5万円なのです。4.8万円というのは、賃料交渉(指値)が入った場合に「ここまでなら下げていい」という意味です。この数字で募集されては、そこから指値が入るかもしれません。

原因が掲載した業者の早とちりにあるのか、オーナーの伝え方があいまいだったのかわかりませんが、同業者にとっては迷惑な話です。オーナーの信頼もなくしてしまうでしょう。賃料や契約条件については、広告に表示していいものなのか、オーナーの意思をしっかりと確認することが大切です。

「家賃交渉が入ったときいくらまで値下げOK?といくらで広告してよいかは別!と、いうことです。」イラストイメージ(c)株式会社不動産アカデミー

また契約条件(定借や法人限定、女性限定など)の表示もれや、一時金の表示もれにもご注意ください。一時金については連載第3回の記事がご参考になるかと思います。
第3回 意外と多い!?一時金トラブルを回避するには?

元付確認もしっかりと

元付無断掲載は最近増えているクレームです。これは連載第8回で解説しました。
第8回 元付無断掲載を防ぐには

元付業者との関係が悪化しては、商売がやりにくくなるでしょうし、「無断掲載した業者が客付しても契約させない」と強硬に出られれば、結果としておとり広告ということになってしまいます。

トラブル防止で業績アップ

(1)正確な情報を提供する
(2)週1回は物件クリーニングをする
(3)先物物件は元付業者の了解を得る

この3点を実行すれば、トラブルはほとんど回避できるはずです。そして反響(問い合わせ)には即時対応いただくことも信頼を築く上で大切なプロセスです。忙しいオンシーズンこそ基本行動を徹底する。そのことが、無用な業務を省き、高い業績につながっていくのだと思います。

2012年7月から隔月でお届けしてきました「そうだったのか!不動産広告」も今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。次回(2014年2月号)からは、スタイルを変え、より現場でご活用いただけるような"実践を交えた内容"で賃貸広告ルールについて解説していく予定です。どうぞご期待ください。
2013年12月
(株)不動産アカデミー 中村喜久夫

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