第6回 特別企画「そうだったのか!公取協」
2013年5月某日。JR市ヶ谷駅をおりて靖国通りを歩くこと数分。ビルの1室に首都圏不動産公正取引協議会、通称「公取協」さんが在りました。
とても温和で優しそうな面持ちで出迎えてくださいましたのは、上席調査役の佐藤友宏さん。
今回の「そうだったのか!不動産広告」は佐藤上席調査役と連載の担当中村氏による座談会形式。特別企画「そうだったのか!公取協」をお届けいたします。
公取協の業務内容と最近の事例
中村) 最近多い違反事例というと、やはりおとり広告ですか?
佐藤) そうですね、賃貸物件のおとり広告が最も多いのですが、それと同じくらい多いのが取引条件の不当表示ですね。賃料や初期費用などの不当表示が目につきます。
情報局員) ネット広告における違反が多くなってきているのでしょうか?
佐藤) 平成20年以降は、ほぼネット広告です。年間200件ほど規約違反があり、そのうち45件から50件くらいがおとり広告などの悪質な事案で、違約金を課徴するなどの措置を講じているのですが、それの7~8割がネット広告ですね。
情報局員) 「措置」といいますと…
佐藤) 表示規約に違反した場合の措置のことです。最も重い「厳重警告プラス違約金課徴」から「厳重警告」「警告」「注意」まで4段階に分かれています。厳重警告以上の措置は、広告を行った事業者を招致して相手の話を聞くなど一定の手続きを踏んだ上で決定します。
情報局員) 「措置」を受けた業者名がユーザーの目に留まることはあるんでしょうか?
佐藤) 違反内容については、当協議会のHPに事例として挙げていますが、正式社名は伏せています。原則として、事業者名が一般のユーザーに知られることはありません。
情報局員) 他にはどういう違反があるのでしょう?
佐藤) 様々な理由で申告などが寄せられるのですが、おとり広告で調べていたら例えば、設備の不当表示が見つかる、といったことも多いです。
中村) バストイレ別の表記などですか?
佐藤) それもありますが、オートロックや宅配BOX、エレベーターがないのに、設備項目とかの欄にその設備を表示しているものも多いですね。
中村) いい加減に表示しているんですか?
佐藤) いい加減というよりも、確認不足というのが多いようです。不動産情報サイトにもよりますが、最近は設備項目をチェックして選ぶことが多いですよね?原稿を手書きしていた時代は、一つ一つ見ながら書いていた。「多ければ書くのが面倒」ということもあったでしょう。でも今はチェックを入れるだけ。そのため時には「誤って選択していた」ということも起こるようです。
情報局員) ということは、業者さんによっては不当表示になっていることを「知らなかった」というケースもあるのでしょうか?
佐藤) そうですね。事情聴取の際にも「チェックミス」と回答される方は多いです。でも、それはデータ反映させる前の再チェックをしていない ということになります。
「措置」よりも「未然防止」に力をいれている!
中村) 公取協さんは、「ミス程度だったら極端に厳しい措置をとるわけではない」という理解でよろしいのですよね? 業界の一部には「些細なミスも許さない、厳しい取り締まりをする」というイメージがついてしまっているようなのですが…。決してそうではない、と。
佐藤) 我々も1件の違反だけを見て措置を決めるわけではありません。複数物件を調査し、その中で違反の内容によって決めています。ただし何物件も違反があれば、それは厳しい処置をせざるを得ません。
情報局員) 調査の結果、違反行為が認められた事業者さんを追跡で調査したりするのでしょうか?
佐藤) 厳重警告以上の措置になった会社については、広告前の事前審査を1か月間実施しています。
中村) 「違約金を払えばそれでいい」というわけではなく、正しい広告を出すよう指導にされている、ということですね。
情報局員) 事業者さんが広告を出す前に相談できる窓口を設けていらっしゃるとお聞きしたのですが?相談に来られる事業者さんは多いのでしょうか?
佐藤) 基本的には相談のほうが圧倒的に多いんですよ。私たち公取協は「措置」することがメインではなくて、「未然防止」を願っているところです。広告表示でわからないことがあったらまず相談してほしいと思います。
中村) 公取協の仕事というと「違反広告の取り締まり」と誤解されている業者さんもいるようですが、そうではない、ということですよね。
佐藤) 研修会などでは、どうしても違反広告の事例を取り上げることが多いので、そう捉えられがちですが、事業者をはじめ、広告代理店などからの相談にも力を入れています。研修会に参加された方からご相談があったりすると、「研修会で話したことが多少は実を結んだかな」と思いますね。
50周年を迎えて~今後の展望とメッセージ~
中村) 今年50周年を迎えられたということですが、今後の活動について教えていただけますか?
佐藤) メインとなるのは「規約の周知徹底」、「違反の未然防止」、「表示規約の不断の見直し」かなと思いますね。今まで以上にスピード感を持って「強化すべきところ」、「緩和するところ」を判断していく必要があると感じています。また、SEOなどネット広告で使われている技術や仕組みについても勉強して対応していかなければいけないと思っています。
中村) ネット広告の普及により市場の透明化が進み、規約を守って広告を出していくことがますます大切になっていくと思うのですが。
佐藤) そうですね。そうなって欲しいと願っています。SUUMOさんを始めとした不動産情報サイトと連携を取りながら、広告の適正化を図っていきたいと考えています。
情報局員) 「緩和」というお言葉がありましたが、規約の見直しはどれくらいの頻度で行われているのでしょうか?
佐藤) 必要に応じて変更をかけています。不動産情報サイトとの連携の中でも規約の改正の話も挙がっていますので、具体的な改正案もあがってくるかと思います。
中村) このメルマガを通じて、不動産会社さんにお伝えしたいことはありますか?
佐藤) 成約済み物件を一定期間掲載されたままにしておくと、悪意がなくてもそれは「おとり広告」になってしまいます。これを防ぐには、こまめに物件のクリーニングをしていただく、新規物件登録の際にもご注意いただくことしかありません。また、自分の事業規模に合わせた物件数の掲載もおすすめしています。マンパワー以上の掲載ですと結局、更新作業がまわらなくなってしまいますから。
中村) ちなみにSUUMOは8日間に1回のチェックをお願いしています。
佐藤) そうですね、そういったルールを守ってきちんと更新していただければ、成約済み物件の掲載は防げると思います。もう一つ、意図的なごまかしはすぐにバレるということも申し上げたいです。
情報局員) 意図的なごまかし、といいますと…?
佐藤) ネット広告特有ですが、築年・徒歩時間・面積・賃料などが検索条件になっていますよね。その条件に合わせて数字を切り上げたりする不当表示がみられるのです。
情報局員) 徒歩10分以内で検索されるよう、実際には13分かかる物件を10分と表示してしまう、といったことでしょうか?
佐藤) そうです。ユーザーには「ミス」と説明しているようですが、見過ごすわけにはいきません。意図的な操作は絶対にやめていただきたいですね。また「キャンペーン賃料」の表記についても誤解が多いようです。きちんとした表示をお願いしたいです(「第1回 キャンペーン賃料の表示にご注意を」を参照)。
中村) 今回は、貴重なお話をお伺いすることができました。メルマガの読者であるSUUMOのクライアントさんにも適切な広告表示の大切さをお伝えできたと思います。
佐藤) SUUMOさんの掲載ルールを守っていれば規約を逸脱することはありません。我々も事前相談に応じますので、一緒に正しい広告を作り、信頼される業界を作っていきましょう!
情報局員) 今日は貴重なお話を伺うことができて大変勉強になりました。お忙しい中、ありがとうございました。
対談を終え、笑顔のお二人 佐藤氏(左)中村氏(右)
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