そうだったのか!不動産広告。SUUMO掲載実践編

講師と2名の生徒による会話形式で構成しております。

キャスト紹介
K先生 不動産鑑定士。不動産広告におけるスペシャリストで生徒の質問にも忍耐強く優しく答えてくれる。
Bさん(生徒) 知識も豊富で博識な生徒。真面目で疑問はその場で解決しないと気が済まないこだわり屋さん。
Cさん(生徒) 思い込みが激しくミスを犯しやすい生徒。無邪気に鋭い指摘や疑問を投げかけたりもする。

第13回 安心してください、使えますよ。
~誤解の多いパースの話~


パース(完成予想図)問題
次の文章の正誤を判定せよ。
① 建物の「パース(完成予想図)※」は、建物が完成した後は使用することができない。
② 隣地に建物があるのに、それを表示しないで白抜きにした「完成図」「パース」は不当表示になる。

※以降「パース」で統一

■完成後に「パース」は使えるのか

  • まずは問題①ですね。
  • 「完成したらパースは使えない」って聞いたことがあるんですが…。そうなんですか?
  • パースって完成予想図のことだよね。完成したのに予想図ってなんか変だし、使えないんじゃない?
  • 実は正解は「×」です。完成後であっても実物と変わらないのであればパースを使うことができます。
  • えっ!?使えるんだ。
  • 誤解している人も多いようですが、使えますよ。但し、キャプションは「完成予想図」ではなく、「完成図」ということになりますが。
  • そうですよねー。パースを作るのって手間もお金もかかるので、完成したから使えないっていうのはもったいないと思っていました。
  • もっとも、完成後の写真があるのであればそれを使用するのが望ましいです。基本は「実際に取引するものの写真を使用する」ですから。
  • そっか!以前の記事でも解説しましたね。
  • 完成後もパースを使い続けるのは、完成後の写真がない場合などの次善の策ということですね。
  • そう考えてください。また「パースが現状と異なる場合には使えない」という点にも注意が必要です。
  • 現状と違う? どういうことですか?
  • 「パースでは、マンションの植栽が大きな樹木が生い茂って描かれているのに、それは数年後の姿で現状は小さい苗木があるだけ・・・」といった場合、完成図として掲載するには修正が必要です。
  • 修正しないとどうなるんですか?
  • 現状と明らかに違うのであれば「不当表示」として扱われます。首都圏公取協のウエブサイトに相談事例として出ています。
  • ほんとだ。「建物が完成している状態で、建物の外観(形状、色彩等)又は敷地内の樹木等の状況が、完成予想図と明らかに異なる場合に、これを修正しないでその完成予想図を完成図として掲載することは不当表示として取り扱われる」って書いてありますね。

■少しの違いならいいのか?

  • ……。
  • どうしたの?
  • あのー、ちょっと変な質問なんですけどいいですか?
  • なんでしょう。
  • 公取協の相談事例では、「明らかに異なる場合には不当表示とする」って書いてありますが、明らかには異ならない、つまり「少ししか違わない」場合は不当表示にはならないってことでしょうか?
  • なるほど! どうなんですか、先生。
  • 「少し」でもダメです。先ほどご紹介した相談事例の解説の前半部分でも「事実に相違する表示・・・を禁止」となっているように、「少し」であっても事実と違う絵や写真は使えないというのが規約の考えです。実際に不当表示として措置されるかどうかは別として規約違反であることには変わりません。
  • やっぱりそうですよね。
  • それに「少ししか違わないならいい」なんてことを認めたら、大変なことになりますよ。
  • 自分の都合のいいように解釈する人も出てきてしまうかもしれませんね。
  • ですから、絵図、写真については「実際に取引するものと全く同一のものを使ってください」というルールにせざるを得ないのです。違っていた場合に、不当表示に該当するかどうかを判断する権限があるのは公取協です。広告掲載する側が「これくらいならいいだろう」と安易に考えて、実際とは異なる写真や絵図を使うのは危険ですね。
  • なるほど。そうですよね。となると、できる限り実際の写真を用意した方がいいということですね。
  • その通りです。

■中古物件にパースは使えるのか

  • あのー、もう一ついいですか?
  • bさん、今回は粘りますねー。
  • パースではいろいろ苦労しているんです(涙)。まぁ、それはいいとして。完成後でも実物と変わらなければパースを使ってもいいんですよね。
  • そうですね、「実物と変わらなければ」。
  • じゃあ、中古でもパースを使っていいんでしょうか?
  • 中古物件は、経年劣化や使用による汚れ等があるでしょうから、完成直後と変わらない、ということは現実的ではないと思いますよ。
  • それは「使えない」ということですね。
  • そうです。「中古物件の掲載においては新築時のパースは使えません
  • 完成後もパースが使えるといってもそれは完成直後、入居前のことだということですね。
  • その通りです。
  • Point!パースは完成後も使用はできるが、「実際に取引するものと全く同一のもの」だけが使用OK!植栽の生育状況が現状と違うパースや、中古物件には使用できない

■隣地の建物を表示しなくてもよいのか

  • では、問題②に進みましょう。「隣の建物を白抜き?」これはダメでしょう。
  • 電線を消したりとか、隣の工場を消したりとかは、もちろんダメですよね。
  • でも、言われてみれば隣地にある建物が描かれていないパースが多いような・・・。
  • 表示規約は「現状に反する表示」を禁止しています。次の条文をみてください。
宅地又は建物の見取図、完成図又は完成予想図はその旨を明示して用い、当該物件の周囲の状況について表示するときは現状に反する表示をしないこと。 (表示規約施行規則第10条第23号)

  • 「現状に反する表示」ってどういうことですか?
  • 物件の隣地に建物があるのに、その部分に樹木などを描いて建物がないように表示する場合などが該当します。
  • 「現状=建物がある、パース=樹木」というのが「現状に反する」ということですね。
  • 電線を消すのも「現状に反する表示」ですね。
  • その通りです。
  • でも、建物の周囲まで正確に表示するのはなかなか大変ですよね。
  • 建物の周囲を描かず白抜きにするのは認められます。
  • 白抜きなら「現状に反する表示」にはならないってことですか?
  • 実際にあるものをないかのように表示するのではなく、周囲を一切描かないということですから「現状に反する表示」にはなりません。よって問題②の答えは「×」ということになりますね。
  • うーん、隣が工場なのにパースに描かないのは、ずるいような気もするんですけど。
  • 「建物の周辺まで表示せよ」、というルールは現実的ではないんでしょうね。「周辺」の定義づけも困難でしょうし。
  • Point!パースを作成するときには実際にあるものをなくす「現状に反する表示」はNG。ただし、周囲を一切描かない(白抜き)場合はこれにあたらない。

■動画には注意

  • 実物と変わらなければ、パースは完成後も使用できるんですね、勉強になりました!
  • そうですね、でも動画の入稿にはご注意ください。SUUMOの内規がありますので。
  • どういうことですか?
  • 新築物件等でパースしかない場合、「動画ではなくCM(コマーシャライザー)をご利用ください」、というのがSUUMOの規定です。
  • パースを使って説明するような動画はダメなんですか?
  • 表示規約上問題がないのに?
  • そうです。動画では「臨場感のある情報を届けるため」に、物件の外観や内部を撮影したもので作成いただいています。パースのみの場合はCM(コマーシャライザー)のご利用をお願いしています。
  • 動画についてはSUUMO独自の規定も多いですからね。以前の記事も参考にしていただければと思います。

■正確な情報提供が成約につながる

  • それにしてもいろいろ難しいですね。
  • 実際に取引するものの写真を使用する」という基本を守っていれば難しいことはないですよ。
  • そうでした。
  • 「少しくらいなら違っていてもいいと勝手に判断しではダメ」「判断権限があるのは公取協だけ」がポイントでしたよね。
  • その通りです。でも判断する人は他にもいますよ。
  • え!?誰ですか?
  • 一般消費者です。広告と現状のギャップが大きければ一般消費者は離れてしまいます。公取協から注意・指導を受けないとしても、これでは意味がありません。成約につなげていくためにも、写真に限らず正確な情報提供をお願いしたいと思います。

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