池本編集長の賃貸ゼミな~る

第26回(最終回)住みたい街ランキング2017
から探る人気の街のトレンド

引っ越しオンシーズンも終盤。今年の賃貸入居の状況はいかがだったでしょうか?物件ごとに悲喜こもごもの状況かと思います。街ごとにも状況は違うようです。人気の街はなにか付加価値をつけるか、多少の家賃調整をすれば入居が決まりますが、不人気もしくは知名度の低い街は、手を尽くしても難しいという声を聞きます。

さて、毎年弊社では3月に『住みたい街ランキング』を発表しています。今年は関東版の発表をイベント仕立てに! 1位の街の駅長さん、1位の自治体の区長さんにSUUMOトロフィーを渡しちゃいました。またイベントを盛り上げるべく、今年のR1グランプリでも決勝大会まで進出したタレントの横澤夏子さんをお招きして私と街トークしちゃいました。

タレントの横澤夏子さんをお招きして街トーク

前段はこのくらいにして早速今年の結果を見ていきましょう。

【関東】住みたい街(駅)ランキング<総合> 上位1~10位

今年の『住みたい街ランキング』の1位は・・・昨年ずっと守り続けた王者の地位を「恵比寿」に譲った「吉祥寺」が返り咲きました。男女別でも両方1位。ただしシングル・DINKS・ファミリーに分けると、シングル、DINKSの1位は「恵比寿」でした。確かに自分のまわりのシングル・DINKS層に話を聞くと、「吉祥寺」より、「恵比寿」、「中目黒」方面の方が人気な感じはしますね。
選んだ理由を聞いてみると、「吉祥寺」と「恵比寿」は趣が異なります。住みたい理由を上位から並べてみると、「吉祥寺」はおしゃれ・緑が豊か・公園がある・独自カルチャー・個性的な店が多い・安くて旨い店が多い・商店街に活気がある、と実に多彩な理由がランクイン。街の魅力が多彩で、おしゃれぴーぽーから自然好き、庶民派にまで幅広く愛されているのが特徴です。一方「恵比寿」は、おしゃれ・ステータス感がある・通勤や買い物に便利くらい、しかなく、芸能人も多く住む「あこがれの街」的な印象ですね。ちなみに横澤夏子さんの一番住みたい街も「恵比寿」だそうです。「家は恵比寿って言ってみたい」「そのステージに来たという成功者の街のイメージ」とおっしゃっていましたね。

ちなみに、今年なぜ「吉祥寺」が返り咲いたのか?その理由の1つに漫画「吉祥寺だけが住みたい街ですか」のテレビドラマ化、井の頭公園の話題(池の水抜きや今年100周年を迎える)など、メディアへの露出が増えて、「吉祥寺」の幅広い魅力に気づかされたことがあると思います。住みたい街というのは「街に魅力があること」は必須ですが、メディアにのって「街の魅力が伝わる」ことで、はじめてランキングに影響が出てくると思います。この2強時代はしばらく続きそうです。

さて今年の他の特徴も見ていきましょう。
トップ10の中で今年が過去最高位になった街が2つあります。
それは5位の「品川」と10位「渋谷」。「品川」は田町品川間に開業される新駅の完成予想が発表されました。新国立競技場の設計を手がける隈研吾氏によるかっこいいデザインで、さらによくなるイメージができましたね。渋谷は大規模な駅の再開発が続いていますが、昨年末にその全貌の完成予想図が発表になりました。またヒカリエに続く再開発ビルとして「渋谷キャスト」ができるなどその先の期待が可視化されたことが好感を持たれたのだと思います。

続いて11位以下をみると、ある特徴が。それは「郊外の中核駅」の上昇。「大宮」「浦和」「立川」がいずれも過去最高位を記録しました。

【関東】住みたい街(駅)ランキング<総合> 上位11~20位

「大宮」はもともと交通・商業の要所であり、15分ほどで歩けるさいたま新都心(コクーンなど大型商業施設を抱える)も含めて一大ショッピングゾーンを形成しています。その一方で、昔ながらの商店街や夜の街も併存しており、吉祥寺同様、幅広い層から拠点感(心の拠り所感)を得られている街です。「浦和」はもともと文教都市・スポーツ都市としての知名度がありましたが、昨今はパルコに続き、アトレが開業し、買い物が楽しめる街に変貌。さらに上野東京ライン開通で、上野乗り換えが不要になったことも好感の要因になっています。「立川」は以前より、伊勢丹、高島屋、ルミネなどの商業施設がありましたが、IKEAが2014年、ららぽーとが2015年、そして2016年に立川タクロスと続々と新しいスポットが誕生、東京西エリアの中核駅としての地位を固めたように感じます。

もうひとつふれておきたいのは、17位の「北千住」、21位の「赤羽」、50位の「錦糸町」、今年初の100位以内にランクインした75位の「蒲田」です。風俗街があったりあまり治安のよくないイメージがあった駅が順位上昇、もしくは好位置につけています。一方で「代官山」は59位、「広尾」が78位、「麻布十番」が85位。「背伸びする街」から「等身大の街」、「イメージ」よりも「実際の利便性」を重視する人が増えていると考えられます。
またリノベーションの街づくりも人気を集め始めています。「清澄白河」が85位→68位→41位と順調にランクを上げています。大型の再開発がなくても、倉庫や古ビルをリノベーションして、魅力的なカフェなどを生み出しているじわじわリノベ系の街も今後注目です。
他方で、「田園調布」41位→71位→95位、「成城学園」52位→94位→100位と高級住宅街のランクが徐々に下がっているのも特徴です。これは閑静な住宅地の人気が下がっていると見るのか、開発が制限されているため、街に新しい話題がなく、その魅力が知られる機会が減ったのか、今後、分析していきたいと思います。

続いて関西のランキングについてもみてみましょう。

【関西】住みたい街(駅)ランキング<総合> 上位30位

関西の『住みたい街ランキング』1位は、5年連続の「西宮北口」でした。関東の住みたい街6位「武蔵小杉」と似ています。東京と横浜の中間地点の「武蔵小杉」に対して、梅田と三宮(神戸)との中間地点である「西宮北口」。駅前に大型マンションが立ち並び、「武蔵小杉」にはグランツリー、「西宮北口」にはガーデンズという巨大なショッピングセンターを擁しています。2位は「梅田」。この2強はここ数年変わりませんが、今年はその獲得点差が約40点と最も縮まりました。梅田はまだ北ヤードという更地が残っており、この開発が進むとさらに差は縮まるのではないかと思います。また「なんば」が10位→7位→3位と順位を上げました。南海なんば駅前は、美装化された南海ターミナルビルの他、今後もなんばパークスとデッキでつながる新南海会館ビル(仮)、旧大阪新歌舞伎座のファサードを継承したホテルの開業など再開発が進んでいます。また多数の高層マンションが立ち並び、住む街としての顔も見えてきました。従来は、“住む場所は住む場所”、“遊ぶ街は遊ぶ街”と街に求める機能は独立していましたが、この「なんば」に代表されるように「住む」「働く」「遊ぶ」「食べる」などを一体化した「ごちゃまぜの街」がいまは人気を博しているようです。

11位以下での注目駅は「梅田」から一駅の「中津」。44位→67位→20位とジャンプアップ。いまもかなり下町感漂う街ですが、近年はマンション建設が増加、また古い家屋をおしゃれなカフェや飲食店などに改装したリノベーションの街としても注目されています。東京の「清澄白河」と通じるものがあります。

不動産とは「1に立地、2に立地、3に立地」と表現されるほど、この条件は大切です。マンションや注文住宅の着工件数が減少する中、賃貸住宅建設着工数は2016年伸びました。こんなに賃貸住宅が増えて大丈夫なのか?大丈夫じゃないですよね。これからの地元の賃貸管理会社には、地元のニーズを知るプロとして「本当にここに新たに建ててもいいのか?」「建てるとしたらどんなターゲットを想定してどんなプラン仕様にすればよいのか」というプロのアドバイザーとしての視点が求められてくると思います。その立ち位置を磨けば磨くほど、川上の情報に関与でき、川上から関与することで商売を繁盛させていけると思っています。

また人口減少の今後においては、街の管理会社は、「街の広報担当」「街の採用担当(新規居住者獲得)」としての役割が期待されます。魅力的な人を引きつけるべく、積極的にまちづくりへも関与いただく存在になるべきだと私は思っています。

一例としてある管理会社の「食堂」という取り組みをご紹介します。
「入居者のための食堂」が魅力的すぎ! 朝食100円、昼食・夕食が500円で食べられるワケ(http://suumo.jp/journal/2017/01/25/126455/)SUUMOジャーナルにおいて史上最高の2万いいね!を獲得したお話です。長文ですがお読みいただければ幸いです。

SUUMOジャーナル「入居者のための食堂」が魅力的すぎ! 朝食100円、昼食・夕食が500円で食べられるワケ

2012年8月にスタートしたこの連載も、今回で最後になります。
また皆様と賃貸住宅新聞や講演の場などでお会い出来れば幸いです。
今までお読みいただき誠にありがとうございました。      池本洋一

★今回ご紹介したランキングの詳細はこちらからご覧いただけます。
関東版:http://www.recruit-sumai.co.jp/data/upload/sumitaimachi_2017_kanto.pdf
関西版:http://www.recruit-sumai.co.jp/press/upload/20170328_sumitai_kansai.pdf

データ出典:
2017年版「みんなが選んだ住みたい街ランキング」(関東・関西)
2017年1月調査/㈱リクルート住まいカンパニー調べ

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