池本編集長の賃貸ゼミな~る

第23回 ポータルでの広告工夫は
「写真」から「コピー」へ

今年の夏はどのように過ごされましたか? 私は夏休みを利用して、息子たちと瀬戸内に旅行に行きました。岡山では問屋街を町ごとリノベーションしてオシャレなスポットに生まれ変わった「問屋町」という街を散歩し、倉敷、尾道と、昔ながらの美しい景観の残る街をめぐり、瀬戸内海にかかる「しまなみ海道」をサイクリングしました。
 旅行をするたびに感じるのは、「写真で見るだけでは、その場所のことは分からないなぁ」ということ。景色は写真のとおりですが、におい、音、手触り、もちろんその場所の味覚も含めて、五感で体感できることが、その場に行くことの醍醐味だと思います。
 じつはこれ、部屋探しでも同様なんです(ちょっと強引ですか?笑)。
 物件の魅力をメディアで伝えるために、「ビジュアル要素が大事だ」ということは、これまでもお伝えしてきたとおりです。しかし、さらにイメージを膨らませてもらうには、写真では伝えきれない情報を「コピー」でいかに伝えるかが重要になります。

そこで今回は、効果的なコピーの作り方について、賃貸検討者を対象に2016年に行なった調査結果※をもとに考えていきましょう。

■条件外の物件も、コピーが良ければ「魅力的」に映る

まずは、このふたつのコピーを読んでみてください。

<A>■床にヒノキ材を活用。部屋に帰るたび森の香りが楽しめる■
床は日本を代表するヒノキ。独自ルートで低価格に仕入れて使用。部屋に入った瞬間に森の香りが楽しめます。キッチンはCookPadユーザーの声を反映したオリジナル製。自然素材のリノベーションルームは一見の価値あり。見学時に無垢ヒノキのお箸をプレゼント。
<B>■明るい帰り道。大通り沿いだけど音対策はバッチリ■
駅から明るい商店街を抜けて10分。途中にはスーパー・コンビニ・ランドリーが揃います。
大通りだから車の音が少し気になるかも。そこは二重窓でがっちり対応。熱線カットガラスだから夏も快適。浴室乾燥機/食洗機など多彩な設備も魅力。インターネットも住戸別配線で常時ハイスピード。

私が書いたコピーです。なかなか魅力的でしょう?(笑)
調査では、このコピーを読んでもらったところ、「築年数を妥協してもいいほど魅力的な紹介の仕方だ」と答えた人が、約2割。「どちらかと言えば魅力的」と合わせると、7~8割の人が、コピーを通じて物件の魅力を認知するという結果になりました(図1)

【図1】築年数を妥協できるほど魅力的か?

ここから、「コピーを工夫することによって、より物件の魅力を伝えられる」ということがわかると思います。

■ポイント1 メリットは具体的に伝えよう

では、どんなコピーが響くのか、詳細に分析してみましょう。
まず、最初に<A>のコピーの要素のうち、「どこが魅力的だと感じたか」の調査結果が(図2)です。

【図2】どのセンテンスが魅力的?コピー<A>の場合

これを見ると、「③部屋に入った瞬間に森の香りが楽しめます」という一文が魅力的と答えた人がもっとも多く33%でした。このような「五感に訴えかける表現」は、イメージがしやすく効果的です。
 次に続くのが「①床は日本を代表するヒノキ」(32.9%)ですが、「⑤自然素材のリノベーションルームは一見の価値あり」よりも支持が高い点にご注目ください。「自然素材」といった総称的な表現よりも「ヒノキ」など具体的な表現のほうが、読者にはイメージがしやすく、魅力につながります。

このように、コピーの工夫ポイントのひとつは「具体的なメリットに落とし込んで伝える」ことです。におい、手触り、音といった感覚は写真だけでは伝わりません。たとえば、日が差し込む部屋の写真に「陽当たり良好」と書かれていても、それは写真からも十分に伝わる情報です。しかし「朝日が差し込む部屋で、目覚めもすっきり快適」と書かれていたら、陽当たりが良いことから得られる「メリット」になり、グッと読む側のイメージをふくらませます。調査に対するフリーコメントを見ると、「ヒノキを使っていることに惹かれました。家に帰るとヒノキの匂いがするのは幸せです」など、コピーによってヒノキのメリットに興味を持たれたことがわかります。

■ポイント2 ネガティブ情報をポジティブに転換

次に、<B>のコピーも同様に見てみましょう。(図3)をご覧ください。

【図3】どのセンテンスが魅力的?コピー<B>の場合

ここで注目いただきたいのは「③大通りだから車の音が少し気になるかも」という表現。このような物件のマイナスポイントはなかなか物件紹介に入れにくいもの。しかし、実際はマイナスポイントのない物件などほぼ皆無。たとえばこの物件でも、音の問題を書かずに見学までこぎつけても「ちょっとうるさいから家賃が低めなんですね…」と、見送られてしまうケースが想像できます。
 しかしその次のセンテンスでは「④そこは二重窓でがっちり対応」と、音の問題に対する対策を補足しています。この一文の支持は32.6%です。これなら、見学の際に周囲がうるさくても「たしかに、二重窓で対策されているから平気かな」と思ってもらえるでしょう。
 ネガティブ情報をポジティブ変換したあとは、「⑤熱線カットガラスだから夏も快適」「⑦インターネットも住戸別配線で常時ハイスピード」さきほどのポイントだった「具体的メリット」を連投し、どんどんと魅力度が高まっていっています。最後のメリット連投術はテレビショッピングから学びました(笑)。

■マイナスポイントは対策を、具体的なアピールができる物件づくりを

ただ、いうまでもなく、このようなコピーでのアピールは、それができる物件あってのこと。検討者が気にするだろう騒音対策、断熱性、セキュリティなどについて、マイナスな点があればきちんと対策し、それを伝えられるようにしましょう。また、ヒノキ材の利用など他にはない魅力的な物件をつくり、それをコピーで検討者に伝えることで、愛着をもって住んでもらえる入居者を見つけられたら、オーナーさんも入居者もハッピーですね。

今回は、物件の魅力をコピーの力でより一層伝える方法を見てきました。これまでの写真や動画でのアピールに加えて、さらにそのメリットをコピーで伝えられるよう、ぜひペンを振るってみてください。ただし大手ポータルでは文字数制限があります。そのせいもあるのか多くの物件が「設備・仕様の羅列型」になっています。差別化できる要素は何か?デメリットからメリット展開できることは何か?まずは気をひくポイントの抽出が必要です。
 「そんなコピーを書ける人がいない」ですって? コピーを書くのに必要なものは、文才や専門知識よりも、時代の共感性だったり、人に「いいね」と言ってもらえる技術だったりします。社員やスタッフの中に、LINEやフェイスブックなどで発信が上手な人はいないでしょうか?
 またこの分野で力を発揮するのは、建築、デザイン、芸術、メディア、プロモーションなどの専門を学んだクリエイティブな人材。中長期的には賃貸業界にこの手の人材採用も重要になってくると思います。

※【調査概要】「賃貸検討者調査2016」直近6カ月で全国の賃貸住宅の物件探し・選定をしている20~59歳の男女を対象に実施(アンケート回収数:810)調査期間2016年5月30日~2016年月24日。調査機関は株式会社マクロミル。リクルート住まいカンパニー調べ

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