池本編集長の賃貸ゼミな~る

第16回 "間取りを変えれば空室が埋まる"
というのは真実か?

多くの地域で7月は「夏枯れ」と呼ばれ、不動産が最も動かない季節と言われます。そんな時期こそオンシーズンに向けての空室対策です。皆さんも9・10月、秋の商戦期に向けてまさに提案されていらっしゃる最中かと思います。
 そこで、今回考えてみたいのは、空室対策の中の「間取り」です。日本の賃貸には「原状回復の義務」という、外国人から見たら意味の分からない、ガラパゴス化したような日本独自のルールがあります。その恩恵を受けて!?下記の<写真1>のように1970年代の団地はものの見事に70年代の雰囲気が保存されております。10年間人が住んで退去しても、また10年前の新築同様に近づけようとする。時代は進んでいるというのに。欧米各国ではこのようなことはありません。事業者もしくは入居者が入居中に時代に合った内装に変えていきます。それは賃貸でも持ち家でも関係ありません。ですから欧米住宅は内観写真で築年数を当てるのはとても難しいのです。<写真2>はロサンゼルス郊外の物件です。築何年くらいだと思われますか?

<写真1> とある団地の原状回復工事後の写真
<写真1>とある団地の原状回復工事後の写真

<写真2> ロサンゼルス郊外の物件
<写真2>ロサンゼルス郊外の物件

答えは1948年築。なんと築67年の物件なのです。地震の有無、気候風土の違いはありますが、欧米の住宅は新築の規制が厳しいこともあり、内装をリモデリングして、現代のニーズに合うように変えていくのがスタンダードになっています。余談ですが、カリフォルニアではステージングといって中古住宅でも新築マンションのモデルルームのように調度品を揃えて、少しでも高く販売するケースがよく見られます。賃貸はそう多くはないですが、最低限のデコレーションを施しているケースはよくありますね。

さて前置きが長くなりました。「空室対策としての間取りの有用性」の話に入りましょう。
「結局は立地・広さ・築年・方位・・・。変えられない条件で選ぶんでしょ。」とお思いの方も多いと思いますが、下記のグラフをご覧ください。

図1)あなたは、住まいを探す際にどのようなことを重視しますか。

2015年5月に弊社が調査した「賃貸検討者調査2015」からのデータです。
いかがでしょうか?結果は「間取り」の圧勝です。多少駅から遠かろうが、築年数が古かろうが、向きが南でなかろうが、間取りが気に入ったら住んでくれる可能性があるわけです。

では次にどんな間取りがいいかを考えてみましょう。まずは、今一番厳しいと言われるワンルーム市場、それも3点ユニット系。3点ユニットの間取りを変える効能についてデータから探ってみましょう。

図2)バス・トイレ一緒 VS シャワーブース+トイレ(バスタブなし)

ユニットから浴槽をとってシャワーブースにして、トイレをセパレートにする提案です(図2)。こちらは、ややシャワーブース優位です。ここでの注目は女性と20代。女性はシャワーブース派がやや少ない。かといってユニットバス派が多いわけでもなく「どちらともいえない」が多くなっています。ある意味「どちらもイヤ」ともとれますので、女性は"バスタブは欲しいけれど、3点ユニットでは不満"なのかもしれません。また20代はかなりの確率でシャワーブースOK派でした。

次に、「バスタブも残してセパレートにする代わりに居室を小さくするのはどうか?」という設問です(図3)。

図3)3点ユニット VS バス+トイレ

過去の同類の調査のときには<6畳+ユニット:4.5畳+セパレート=1:1>の回答だったのですが、今回は居室が4.5畳と狭くなっても、セパレートにしたい派が多い結果となりました。特に女性と20代は高いスコアに。3点ユニットは男性・女性・若い人・ミドルの人でニーズに差異があります。ターゲットを見据えたうえでの適切なリフォーム提案が求められます。

最後にふたり暮らし向けを見てみましょう。<2DK VS 1LDK>(図4)。ふたり暮らし&ファミリーの人たちに聞いてみました。

図4)【2DK】VS【1LDK】リビングの有無

答えは僅差ながらも1LDKの勝利。男性はそれぞれの個室がある2DKを好む人がやや多い結果に。年代別では大差なし。ただ、ファミリーでも1LDK派が多いのは意外でした。また【B】の"洋6+K3+LD10"は贅沢なシングル層にも受けが良いと聞きます。それも考えるとより広い客層を集められるのは1LDKということになりそうです。特に女性向けを意識するならプランを変えていく価値は大きいと思います。

最近シニア向け物件の取材を多くしていますが、シニアでも1LDKの人気が高いです。最近では部屋とLDを完全に壁で仕切らずに天井から吊るすタイプの稼働間仕切りで仕切るタイプが人気です。こうすることで寝室からもテレビが見られたり、気配を感じたり、明るさを担保できたりするからです。またキッチンも対面カウンター型から壁付型に少し揺り戻しがきている感があります。面積の合理性や調理のしやすさという実利をとる層が増えています。こちらをご覧ください、某シニア向け物件の間取り図と写真です。

某シニア向け物件の間取り図

廊下からキッチン、リビングへと同一化された導線
写真:廊下からキッチン、リビングへと同一化された導線。
※間取図内カメラマーク6からの撮影

廊下とキッチンワークの導線が同一化され、洋室の収納は通常のクロゼットに加え、FUTON(ふとん)収納もあるので来客時にも対応可。吊り型の間仕切りのため、普段は開けておけばバルコニーからの明るい光が洋室にも届きます。

「間取の有用性」についてのお話はいかがでしたでしょうか?秋のシーズン前のこのタイミングで、適切な間取りに改善していく提案に活用いただければ幸いです。

※出典:2015年賃貸検討者調査/株式会社リクルート住まいカンパニー調べ(2015年5月)

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