池本編集長の賃貸ゼミな~る

第13回  2015年の新キーワードは?

皆様 旧年中は大変お世話になりました。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
 さて、新春1月号ということで、今回は私が思う賃貸業界における「2015年のキーワード」について考えてみたいと思います。

ズバリ!私が考えるキーワードは「競争から共創へ」・「脱!実家暮らし」の2つです。
 まずは「競争から共創へ」からお話したいと思います。
賃貸住宅の内装といえば、一昔前は白い壁に茶色のフローリング・建具という「(嫌われない)画一性」が標準でした。ところが2000年後半から空室が目立ちはじめ、デザインに「(好き嫌いが出ても)独自性」を持たせる「競争(差別化)戦略」が必要だと叫ばれはじめ、賃貸フェアでも「リノベーション系のブース」が賑わいを見せるようになりました。ところがその戦略すらももはや同質化し、競争優位性が薄くなってきました。そんな状況の中で生まれた商品マーケティングが「共創」です。

「女性」をターゲットにした分譲マンションの商品開発を例にします。
90年半ばまでは男性設計者が「たぶんこうだろう」という想定で商品企画する会社が大半でした。ところが95年から「シングル女性のマンション購入」という新しい潮流が見えて、分譲マンション領域では「女性デザイナーが企画する」という変化が生まれました。さらに2000年に入ると社内の女性社員が商品に意見するというケースも生まれました。そして2013年、14年からは消費者参加型で商品をつくる「共創」という商品づくりが始まりました。東京建物の働く女性の住まいを考え共に作り出すプロジェクト【ブルーモワ】がその大表例です。【ブルーモワ】は働く女性たちの気持ちに寄り添い、対話を積み重ねながら、これからの働く女性の幸せな生き方を共に考え、共に創り出すことを目指すプロジェクトです。(http://sumai.tatemono.com/brillia/bloomoi/

ブルーモワ

その活動成果を1つご紹介します。ファミリー向けだと「対面カウンターキッチンが当然」という風潮がありますよね。でも働く女性とワークショップを重ねると、対面で子どもを見ながらゆっくり料理という光景は実はあまりなく(笑)、「ぱっと集中して料理したい」というニーズが多かったとか。そこで調理器具が取りやすく、天板も広い背面キッチンをモデルルームで提案したところ、その採用率が非常に高かったそうです。

調理器具が取りやすく、天板も広い背面キッチンのモデルルーム

この動きは飲食・メーカー系でも盛んで、マクドナルドはとんかつに合ったソースを消費者とつくる「とんかつマックバーガーの新ソース開発プロジェクト」を。サッポロビールは、ファンと共同開発で「百人のキセキ 至福のブラウンエール」を作り全国発売しています。

そしてこの流れは賃貸住宅にも来つつあります。
福岡のスペースRデザインには「リノっしょ」(http://www.space-r.net/renossho)という企画があります。これは入居する方とオーナーがいっしょにリノベの方向を決め、お金も両方が負担(入居者は家賃に上乗せして分割払い)します。同じ福岡の吉浦ビルでもやはり、オーナーが入居者と一緒にDIY型で部屋づくりをしています。

リノっしょ

新築賃貸で「共創」の考え方を持ち込んだのがメゾン青樹の「青豆ハウス」です。入居前に全8室の入居者が思い思いの色で部屋の1面の壁を塗っていきます。このような入居者によるDIYは今年さらに広がると思います。また最近では友達などを呼んでワイワイ楽しくパーティ感覚のイベントとして楽しむ「リノベパーティ」という現象も生まれています。(http://suumo.jp/journal/2014/04/15/61072/

入居前にそれぞれの壁に思い思いの色を塗る入居者たち/青豆ハウス(メゾン青樹)

写真:入居前にそれぞれの壁に思い思いの色を塗る入居者たち/青豆ハウス(メゾン青樹)


愛着ある空間を仲間とともに作り上げる新しい手段「リノベパーティ」がこれからのリノベマーケットをけん引

「共創」で出来上がった部屋は、当事者に受け入れられるのは当たり前ですが、その入居者が退去したあとでも通常の部屋より"個性と愛着ある部屋"として喜ばれることも多いようです。ぜひ入居者とともに部屋を考え、創っていくことでの満室経営、長期入居経営の成功例があればお知らせください。

 続いて2つ目のキーワード。これはキーワードというより「仕掛けたいこと」です。それが「脱!実家暮らし」。
既に一人暮らしの人が転居しても、前の部屋は空いてしまう・・・。賃貸にはマッチポンプ構造があります。つまり新築建築を止めるか、新たな賃貸需要が生み出されないことには永遠に空室率は低下しません。
何かいい需要がないかと思っていたとき、某番組でこんなやりとりが!
事の発端は「独身30歳の娘が、出勤時間ギリギリまで寝ており、昼食のお弁当づくりも母親任せ。家にいる時は一日中寝ているので、掃除・洗濯・料理も全くしないことに怒っている」という50代男性からの投稿。
これに対し司会のマツコデラックスさんは、
「30代女子は全員一人暮らしをしなさい。」
「35歳になったとき、男はこれからよ。これから結婚して、全然普通よ。でも、女の人が35歳から結婚して出産するって、そんな簡単なことじゃないよ。」
「実家にいると料理ができない、洗濯できない、部屋は泥棒に入られたみたい(に汚い)、生活力のない女子になってしまう」と熱弁を振るっていたのです。
これを聞いてピンときました。確かに一人暮らしは寂しいから人恋しくなる。生活力・女子力も付く。少子化、晩婚化、非婚化という社会課題に対しても「一人暮らしのススメ」のスジは悪くないなあと。

そして、このターゲットにどう呼びかけていくかを考えはじめました。もちろん、実家女子だけでなく実家男子も含めて。自らが生計を立てることは社会性を育む意味でも重要ですから。

でも実家女子の一人暮らし推進はそんなにラクじゃないですね。SUUMO編集部にもたくさんの実家女子がいたので聞いてみましたが、「一人暮らしのお金はもったいない」「他で使いたい」「実家居座りはよくないと思いつつもやはりそのラクさに甘えてしまう」がほとんど。「キッカケがあれば考える」という実家女子は私の周りでは3割程度。その条件は家賃が一定期間安くなることと、家具家電付きと、セキュリティでした。
 まあ、どこまで彼らにインセンティブを渡すかは議論ありますが、もし住んでくれれば「初彼氏」ならぬ「初賃貸」ですからそうすぐには他の彼氏(賃貸)に浮気はしない気がします。もう少し脱実家予備軍の深層心理を深読みして策を考えてみたいと思います。もし、何かいいアイデアを思いついた方がいらっしゃれば、弊社担当までご連絡ください。ぜひ、業界をあげて検討していきたいと思っています。

新規需要の創造という点ではシングルシニア向けも同様です。サービス付き高齢者住宅もありますが、ライトな見守りサービス付きの一般賃貸なども登場しています。あえて外国人向けに絞った集客で成功している大家さんもいます。
 2015年はこのような「新規需要創造」にSUUMOもぜひチャレンジしていきたいと思います。
 あらためて本年もどうぞよろしくお願いします。

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