池本編集長の賃貸ゼミな~る

第11回  接客の重要性
~ネガティブアプローチから入る信頼獲得~

今年の夏は雨が多かったですね。9月に入っても秋雨前線が停滞し、カラッと晴れる日がなかなか訪れませんでした。賃貸市場は堅調なほうですが、売買市場とくに分譲戸建・注文市場は4月以降、「消費税アップ前線」が停滞し、小雨状態が続いています。5年固定で0.5% 変動で0.6%台、フラット35の固定金利も1.66%と、住宅ローン金利が史上最低を更新している中でも厳しい状況が続いています。年内に発表があると言われる「来年に消費税10%がみえてくる」、「冬のボーナスの増額がみえてくる」、「金利が上昇し始める」など、なにか『今急いで買う理由』がないと、この前線は遠のいてくれない予感がします。

さて今回のテーマは「接客の重要性」です。賃貸市場でも来店数が減少しています。今年4月末に行った「2013年度 賃貸契約者に見る部屋探しの実態調査(首都圏版)」では契約までに1店舗しか訪問しなかった人が5割を超えました(図1)。来店数の減少はここ数年続いていましたが、過半数が1店舗というのは調査開始依頼はじめてのことです。

図1)部屋探しのために訪問した不動産会社店舗数(全体/単一回答)

これは賃貸住宅を借りる人が減ったというよりも、物件情報において写真20点掲載が当たり前になり、動画や360度ビューも装着されていく中で、インターネット上で「まあこれだろうな」という目星をつけてくる来店者が多くなっているからだと推測されます。そしてこの傾向はしばらく変わる理由が見つかりません。これからはインターネット上で物件の魅力をいかに100%に近い状態で伝えられるか、その後の問合せメールや電話があった際に、その物件に対して「あなたの目の付け所は正しいです」と、どこまで背中を押してあげられるか、そして来店された時に「この物件でいいんだ」「この店なら安心だ」「この担当者は信頼できる」という印象を与えられるかが重要になってきます。

下のグラフ(図2)は不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)がサイト利用者に聞いたアンケートで「不動産サイトに何を求めるか」という質問へのフリーアンサーを集計分類したものです。1位は「情報の正確性・信頼性」でした。しかもそれが年々伸びています。

図2)今後不動産情報サイトに求めることについて(自由回答)

また下表(図3)は不動産会社の対応がその後の消費者の行動にどのような影響をおよぼすのかを調べたものです。ここではネガティブな情報が来店時や問合せ時に判明した場合、もう二度とその会社には問合せしないという消費者の傾向が見てとれます。

図3)不動産会社の対応による問合せの変か(N=1,523)

これに関連して、私が先日、ある自動車ディーラーに行った際の体験談をお話します。その会社はマツダ。私はアクセラという車に興味があったので、その試乗に訪問しました。着くなり営業マンからこう言われました。
「インターネットでこの車についてはお調べになりました?ご存知かもしれませんが、この車、マツダコネクトというナビが正直イマイチなんです」
「えっどれくらいイマイチなんですか?」
「高速と一般道の認識が甘いです」
(ふむふむ、確かにありがちだが、今の市販ナビよりはダメってことだな…)
「曲がるべき交差点を過ぎてから曲がれって出ることがあります」
(ええっ、そもそもナビとしての基本機能がダメじゃないですか)
「自分でこっちのほうが早いって知ってあえてルートから外れているのに、いつまでも外れた地点にもどろうとする」
(いやぁいつのナビだよ、ありえないなぁ)
 実は事前にちゃんとインターネットを見ていなかったので、家に帰って見てみると、マツダの情報公開は予想をはるかに超えていました。
 この"Driver's Voice" 右下を見ていただきたい。拍手の多いコメントランキングを見ると1位に「ナビの不満爆発です」。ネガティブなことが目立つような仕組みに(結果的にかもしれませんが)なっていることにまず驚き、そしてそれを開いてみるとまたびっくり。

マツダDriver's Voice

ナビの不満爆発です

引用元HP:http://www.axela.mazda.co.jp/voice/sport/ マツダ株式会社

ここまで書かれたものを自社ホームページで公開しています。正直、気持ちがやや萎えました。ただそこから、「正直、ナビについては今はオススメできるレベルではありません。ただ車のデザイン、性能、特に走りについては本当に自信があります。ナビについてはどんどん更新しているので、お客様が購入なさる頃にはだいぶよくなっていると思います。」と言った営業マンの言葉を思い出しました。
 なるほど。もし私があとでこの実情をホームページで知ったら、この営業マンを不信に思い、マツダブランドに対しても残念に感じたでしょう。そして購買意欲を失ったでしょう。でも先にネガティブ箇所を伝えてくれ、その後でそれを凌駕する魅力を聞き、さらにネガティブなナビも今後は改善される、となれば悪くないかも。そして「よくこの営業マン、先にこんなこと言ったなあ」と。ここに信頼が生まれます。

不動産の営業現場でも同じことが言えるのではないでしょうか?「この物件、夜になると少し通りの車の音が気になるかもしれません。ですがそこは二重窓で対応していますし、最近では防音効果のあるカーテンなんかもあります。そして何よりもその分お家賃はリーズナブルになっています。」と言われれば、"なるほど、悪くないな"と感じていただけるのではないでしょうか?これが「これは家賃お安めだと思いますよ」とだけ言われて、現地に行ってお客様があとからその通りの騒音に気づかれた場合は、「安い家賃なりに理由があるわけだ」となって、成約を逃すかもしれません。

「先にネガティブ、後でメリットフォロー」このスタイルは、来店数の減っていくこれからの賃貸の集客・接客を考えていく上で、大事なひとつの型なのではないかと思います。今ならこれは差別化になります。でも数年後には当たり前になっているかもしれません。
 接客の事例をご紹介しましたが、これは広告表現にも関わってきます。「あえて先にネガティブ情報から入るアプローチ」。よろしければ参考にしていただきSUUMOの物件入稿にもご活用いただければと思います。

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